世界で最も使われている言語は、英語ではない。ボディランゲージとブロークンイングリッシュだ。日本人のような英語を母国語としない非ネイティブこそが世界の多数派だ。
このような主張は決してウソではない。世界では今、非ネイティブで英語を話す人が急増している。
世界的な言語学会の推計によると、2015年時点で世界の英語人口は17億人。そのうち英語を母国語とする人は約4億人にすぎない。つまり、英語を話す人の約80%は非ネイティブスピーカーということがわかる。
1980年代から高まり始めた世界の語学スクール熱は、2000年代に入ると一気に過熱し、2015年時点での世界の英語学習者は約25億人と推計している。実に世界人口の約30%以上が英語を学んでいる。
ヨーロッパでは2000年以降、英語人口が右肩上がりで、ドイツ、フランス、スペインなど西欧の大国のみならず東欧のバルト三国、ハンガリー、ルーマニアなどでも英語人口が増加している。
アジアでも流れは同じ。韓国では英語力がないとより良い職に就けない。サムスンやヒュンダイなど韓国の大企業は新入社員に対し、TOEIC800点以上を求めるのが普通になっている。中国でも国を挙げて英語力強化に励んでおり、毎年2000万人を超す英語人口が新たに誕生している。
世界で英語を母国語とする人は全体のわずか5%で残りの約95%の非ネイティブが英語を学び始めたことで、英語の世界に大きなパラダイムシフトが起きている。こうした英語ブームの背景にあるのは、英語に対するビジネスの見返りの急上昇だ。
グローバル化の更なる進行により、世界のあらゆる産業の市場は米日欧の先進国からBRICsなどのような新興国へと大きく転換しつつある。その新興国の多くで、ビジネスの公用語となっているのは、非ネイティブの英語である。
英語ができれば、中国語やスペイン語ができなくても中国本土や南米で仕事ができる。逆に英語ができないと、大きなビジネスチャンスを失うことになりかねない。
一方、英語を習得するコストは世界的に低下している。インターネット上には、無数の英語コンテンツが溢れ、街に歩けば英会話スクールが軒を連ね、スカイプを使えば、英会話のレッスンを受けることができる。
アメリカやイギリスのような英語を母国語とする国では、彼らの語彙や発音に追いつくために、非ネイティブは血のにじむ努力が必要だった。しかし、今増えているのは非ネイティブ同士のコミュニケーションだ。
非ネイティブ同士であれば、ネイティブのような発音は必要ないし、語彙も限られてくる。2004年頃からすでにビジネスや旅行英会話の80%以上にグロービッシュが最適になった。もう一つは、アジア諸国によるエリートの再教育。
日本人は受験勉強で英語の知識はあるが、それを使える英語にするトレーニングが不足している。さらに、完璧を目指しすぎて間違いを極端に恐れ、気後れしてしまう。しかし、グロービッシュなら実践的で発音にもうるさくない。
一般的に、日本人の英語力は世界でも下から数えることができるほど低い。英語能力テストTOEFLの国別スコアを見ると、日本はアジア30カ国中27位。ただ、別の英語能力テストIELTSでは、アジア16カ国中8位と中国や韓国よりも上位にある。
シンガポールやフィリピンなど準英語圏にはかなわないが、中国や韓国に追いつくことは努力次第で可能になってきた。
これまで日本人は、英語ができない理由をさんざん探してきた。しかし、非ネイティブが世界の多数派になった今の世界では、ネイティブ並みの発音も、完璧な文法も求めることができなくなった。もう言い訳はできない。日本人が真剣に英語を学ぶときがやってきたのだ。
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