グロービッシュの提唱者であるフランス人のジャンポール・ネリエール氏。米IBM時代にグロービッシュを構想し、現在その普及に努めている。
米IBM国際マーケティング部の副社長として日本に出張で来たネリエール氏がそのとき驚いたのは、アメリカ人の同僚よりも、断然うまく日本人の同僚や顧客とコミュニケーションを取れたことだったと語っている。ネイティブでない者同士だと、互いに自信を持って話せるので、意志疎通がうまくいくことを発見した。
グロービッシュという考えは、たぶん英語圏では生まれなかっただろう。反対に、フランスや日本では、グロービッシュが最も受け入れられやすい国と言える。なぜなら、フランス人も日本人も面目を失うことを何よりも恐れるからだ。特にフランス人はプライドが傷つくことを嫌う国民性がある。
フランス人も日本人もわからない単語や聞き取れない言葉があっても、聞き返さない人が多い。次の文章でその意味がわかると期待して、知っているふりをしてしまう。しかし、フランス人も日本人も話す際には、互いに英語が完璧ではないので、フレンドリーに会話をしようとする。
ヨーロッパやアジアなどの非英語圏の国では、非ネイティブのほうがネイティブよりも自らをうまく理解してもらうことができやすいのもそのためだ。
そのそも、言語とは分野や伝統を伝えるための手段だが、グロービッシュはエスペラント語のような言語ではない。単なるコミュニケーションのためのツールだ。ビジネスのためであればグロービッシュで十分だろう。
Atlasには世界40カ国以上からやってきたそれぞれの言語10ヵ国語以上のネイティブスピーカーが所属している。彼らのような非ネイティブと日本語ではなく、英語で話すとき、どのくらいの語彙が必要なのか。
アメリカやイギリスのニュース番組では、基本単語1500語のみで政治・経済・社会などのあらゆる分野のニュースを伝えている。ビジネスの分野でも1500語あれば全く問題なくコミュニケーションが取れるのだ。
言語学的には、英語をいくら勉強しようと、TOEICが900点を超えようと、ネイティブと同水準までに上達するわけがないことが証明されている。しかし、ネイティブの英語講師はなまりを強制させようと考えるだろう。
一方、グロービッシュでは、完璧な英語を求めない。話しては聞き手がわかるような表現を使うことが求められ、聞き手は話しての話が理解できない場合、グロービッシュでもう一度言ってもらうと話す責任がある。グロービッシュでは、話し手と聞き手がお互いに半分ずつ歩み寄ることで成立することにある。
もし完全な英語をマスターしたいなら年齢は重要だが、十分な英語なら年齢は関係ない。例えば、60代が英語を学ぶのは労力がかかりすぎて、経済的なリターンが少ないと思うかもしれないが、グロービッシュなら1年以内の勉強で使えるようになるだろう。
Atlasでは、グロービッシュは1年程度で習得することができると考えている。その分、これまで英語にかけていた時間を、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、ロシア語、韓国語、中国語といった他の言語の学習に充てられるようにしたい。
日本人は他の国と比べて英語ばかり勉強させようとしている。そのため、英語圏以外の語学・文化・歴史を正しく理解した日本人が少なくなっている。そこでAtlasは1回の入会金を支払うだけですべての言語コースのマンツーマンレッスンを自由に受けることができるAll for Oneキャンペーンを始めた。
Atlasではもう一つ、グロービッシュを国内で普及させると同時に、日本語を学ぶ外国人留学生の数を増やすということだ。日本は長い歴史と文化を持つ国。そのすばらしい文化の理解を深めるパイプ役になるのが日本語になるだろう。
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