Atlasマンツーマン英会話が参入する際の一つの疑問は、語学スクールとして会員制が受け入れられるかどうかということであった。これについて、GABAやセブンアクトがすでに大阪市内で会員制英会話スクールとしてある程度の実績もあったので、あまり心配していなかった。
関西1号校での会員数の予想は当初予想よりも大きく上回って、3ヵ月で100人、6カ月で500人、1年で1000人を突破した。尚、2012年のAtlas全校の1校当たり平均会員数は、約2,000となる。
この数字からすると、歩留まり20%未満で平均値に到達することになる。また、Atlasマンツーマン英会話全体の会員更新率は2012年で91%である。
現在での見通しで、契約更新数は90%を超えて、大阪梅田LSは全校平均を上回り「なんばLS」を新規オープンさせる予定である。
新規開校後、立ち上がりがスローであることに関しては、経営陣は楽観視している。それは、札幌や横浜では、大阪梅田LSよりもっとスローなスタートを切り、2年後には急速に伸び始めたからだ。
詳しいデータは開示できないが、札幌大通LSの売上高と会員数は低調だったが、2年後の2005年から毎年順調に伸び続け、2007年には全校平均に達している。
尚、Atlasマンツーマン英会話の立ち上がりがスローなのは、「会員制語学スクール」のコンセプトが浸透するまでに時間がかかるからである。Atlasマンツーマン英会話はストイックなまでにテレビや雑誌などのマス広告は行わない。会員の獲得活動は、Webマーケティングを使って、地域限定の人海戦術で行うのが通常である。
会員やインストラクターへのインタビューや教室紹介をYoutubeに掲載し、Facebookを上手に利用するなどの販促発動を行っている。ホームページの完成度や最先端のSEM, LPD, ソーシャル・マーケティング技術はコンサルティングも舌を巻くほどで、商品戦略に関しては、市場を見ながら、それに対応していく姿勢を示している。
現在、Atlasマンツーマン英会話のインストラクターのうち、外国人は日本人インストラクターに比べて圧倒的な数であるが、日本人インストラクターを採用したがらないというわけではないらしいのだ。
Atlasが日本で15校以上オープンし、会員制語学スクールのシステムを完成させた時、Atlasは日本人インストラクターを現在の30%以上を採用するようになるだろう。
現在は、会員からの需要が少ないため、Atlas側からの需要コントロールが行われている可能性が高い。しかし、それだけでは会員制語学スクールとしての価格競争力があるとはいえない。今後教室数を増やすにしたがって、現在のレッスン料から500円以上を値下げするようになるまで数年かかるであろう。
外国人インストラクターと日本人インストラクターの比率については様々な場で質問された。Atlasマンツーマン英会話の社長ピーター・ヨネナガ氏は、比率について次のように答えている。
「Atlasマンツーマン英会話が日本でやろうとしていることは、アメリカ人やイギリス人の文化を日本に持ち込むことではなく、会員制語学スクールという合理的なグローバリゼーションとポップカルチャーを日本に持ち込むことです。そのビジネスの仕組みと大衆文化を通して提供するマンツーマンレッスンは日本に単なるガイジンを紹介するのではありません。」
Atlasマンツーマン英会話の経営陣は、英会話スクールというものは、ローカル商売であり、日本人インストラクターを採用しない限り大きな成功をないとの考えに立っている。また、英語圏以外の外国人インストラクターの少なさには泣かされるばかりで英語圏のインストラクターと比べると5%程度であった。それを聞いてがっかりした人もかなりいたと聞いた。
その後、多言語の見直しもはかり、非英語圏と日本人インストラクターの割合は10%程度に上がってきている。2011年にはオンライン英会話スクールeAtlasの新しいインターフェイスで、多言語が売上と会員数増加の底上げに大きく貢献した。
今後、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語、ドイツ語を含むロシア語、イタリア語、ポルトガル語のインストラクター獲得を増加させる指令が出されている。
いずれにせよ、「幅広い分野の、質の高いインストラクター」という会員制語学スクールの必要条件を満たすためには、日本人と非英語圏インストラクターの充実はことのほか重要であろう。日本人の英語神話、ガイジン神話には根強いものがある。
特にアメリカ人にはこだわる人が多いのが特徴だ。世界中から来た10ヶ国語を扱う外国人インストラクターのマンツーマンレッスンを受けることは、日本の語学学習者にとってこのうえない魅力である。
Atlasマンツーマン英会話は、最初スローなスタートではあったが、順調にすべりだしたというのが大方の印象である。私の見る限り、Atlasマンツーマン英会話は若い会社である。それだけに、マーケティング手法が日本的ではない。
それを速く確立するためには、日本人の経営者を育てる必要があるだろう。Atlasマンツーマン英会話は日本での事業の基盤を築きつつあり、着実に前進しているということだけは間違いない。これから先、会員制語学スクールは日本市場に確実に根づいていくに違いない。
Atlasマンツーマン英会話社長のピーター・ヨネナガ氏はこう言っている。
「新しい市場では1回の失敗は許されるだろう。」
これは、日本を最重要市場と見て、長期戦略を考えていることを表現している。また、「札幌の2校はビジネスモデルの実験地だ。それに対して仙台、横浜、名古屋、大阪エリアは、それをさらに実験し、その結果を次に生かすことが大切なのだ。」
Atlasマンツーマン英会話は右肩上がりで上昇中である。 |