旅行会話の目的である「自分の外国語が通じた」という快感について話をしましょう。「自分の外国語が通じた!」という言葉について、みなさんが持っているイメージと実際に受ける感覚は、実はかなり違います。一般的に「自分の外国語が通じた!」という言葉から想像すのは、「自分が外国語を話す。」「それに対して相手がきちんと答えてくれた。」ということだと思います。
最初に「自分が外国語を話す」がありきなのですね。ここが実は大きな問題なのです。だからすべての旅行会話本、あるいは語学初級本は「簡単なフレーズでもいいから、まずは話せるようになること」を主眼にして書かれています。たしかに外国語でペラペラ話すことはだれもがあこがれます。だれだって、できればそうなりたいと思います。
しかし、「話せるようになること」をコミュニケーションの基本に置くと、そこに行きつくまでの道のりが非常に険しく遠いものになるというのも事実です。ちょっと脱線しますが、そもそも「ペラペラになる」ということがどういうことかをお話しましょう。
「○○さんは英語をペラペラに話す」と話している人がいるとしましょう。その場合、それを言っている人は「○○さんは英語を話しているけれども、話している内容はわからない」という状態にあります。つまり、ペラペラとは「その言葉がわからないけれど、流暢にしゃべっている状態」を指す表現でしかないことがわかります。
逆に英語がわかる人は、話の内容に意識がいってしまうので、ペラペラかどうかなんて問題にしません。自分自身はいくら英語の勉強をしても普通の人なら絶対にペラペラになったという意識を持つことはできません。しかし、自意識過剰な人は別です。
なぜなら自身が話していることは、何を話しているかあるいは何を話せていないかを100%把握しているからです。ペラペラというのは、「その対象となる言語がまったくわからない人」が使う言葉なのです。
さてペラペラを脇に置いて、次は「言葉が通じる」ということについて話を進めます。「外国語が通じた!」と感じるのは自分が話した外国語に相手がきちんとと答えたときに限りません。相手が言った外国語の意味がわかった場合も外国語が通じると感じます。
逆に自分がいくら外国語で話しかけても相手の答えを自分が聴き取れなかった場合は、「通じた!」とはならないでしょう。つまり、「外国語が通じた」というのは話せることだけではありません。相手の言っていることがわかることもより大切なのです。
Atlasでは常々「外国語で最も重要な能力はリスニング」と指導しています。相手の言うことがわかれば、あとは身振り手振りで自分の意志を相手に伝えることができますし、その言葉にならないメッセージを相手に伝わったり、相手の返事の意味が理解できればわかります。また、相手の言っていることが理解できれば、必要以上に恐れることもなくなります。
外国で現地の人から現地の言葉で話しかけられた時にパニック状態になることは海外に行ったことがある人なら一度くらいあるかと思います。その一方、相手の言っていることがわかると、それが相手が親切で言っていることもわかるわけですから、安心して海外にいられるというストレスもグッと減ります。この状態も充分に「外国語が通じている」と言えるでしょう。
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